人間関係のキモは「温度差の調節」にあり。

2015.11.06人間関係,日常生活

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夜20時。

食事中の上司に対して部下が発した言葉は、

「この時間も残業代になりますか?」。

 

言葉とは本当に面白いもので、誰が発信するかによって、また、誰が受け取るかによって意味が変わってしまうものです。子どものころによくやった「伝言ゲーム」の伝わり方はまさにそれを表していますよね。使う言葉は同じ日本語なのに、誰かのフィルターを通すことによって、最初に伝えた人の言葉が最後に伝わった人の言葉と全く違うものになっていたりします。

 

自分が伝えたい内容が、伝えた相手にストレートに届くかどうかは実は未知数。逆もまた然り。それを「伝わっているだろうな」とこちらが思っていても、実は真意が伝わっていなかった、なんていうことが人間関係にはよくおこります。

 

たとえば「共通言語がない」例として出される「世代間格差」。上司が若い部下に対して感じるあの感覚ですね。実は冒頭の言葉は筆者である私が20代の頃に、上司に言った言葉です。海外とのやりとり中の残業。返答を待つ間、外で食事を取ろうということになり上司と食事をすることになりましたが、当時の私は上司との”飲みニケーション”はちょっと苦手。しかたなくしている食事。その後も社に戻って仕事をする前提だったので、私としては「残業と残業の間の食事」という認識です。つまり当然、私の気分は「残業中」。聞かずとも勝手に残業をつけてもよかったのでしょうが、一応聞いたんですね。その時の上司、一瞬固まって「それは貴女の判断に任せます」と言いました。場所は、吉牛とか立ち食いそばとかそんな手軽なものではなく、社の近くの結構いいレストラン。今はこの時の上司の気持ちが私にはわかりますが、当時の私は全くわかりませんでした。

 

この時の二人のコミュニケーション、思いっきりすれ違ってます。きっと上司はカチンときたでしょう。部下はその質問の何がおかしいのか気付いていない。まさに、「お互い全く分かり合えていない」状態。この状態を表すキーワード、それが「温度差」です。伝わらない、分かってもらえないという時は、たいていがこの「温度差」に問題があります。

 

では、この温度差の要素って何でしょうか。言葉の意味の違いや、捉え方の違いは、単なる思い込みや勘違いも含めて、全ては考え方が違うというところから生まれます。その土壌はどこにあるか。

 

それが、環境です。

 

その人がどこでだれといるか。その場所で何を見てどんな会話をしているのか。

その違いが、コミュニケーションの際の温度差になる。

それぞれがどんなコミュニティに属しているかで違うわけです。たとえば世代や年代の違い、教育水準の違い、住んでいる場所の違い。ただそれだけです。いいも悪いも本来はそこにはありません。大阪で「たぬき!」と頼んだら油揚げの乗った蕎麦が出てくることに関東の人はびっくりしますけど、ただの文化の差です。それと同じ。

 

人間はみんな違って当たり前。だってそれぞれ知っている環境が違うから。そう思うと、コミュニケーションする時の前提として「同じ日本語だから」という感覚は通用しないことがわかるわけで、人間関係で大事なことは、善し悪しををジャッジする方法を取らずに、いかに他人との「温度差をうまく調整するか」なのだと私は思っています。

 

この上司は結局、私の発言に対しては苦言の一言も言わず、善し悪しのジャッジもせず「私の判断に委ねて」くれました。今思えば凄いなあと思います。自分と違う判断軸を持つ相手を、ひとまずは尊重して受け止めるということは、実はなかなか難しいことなのです。他のことで沢山怒られたりもしましたが、この上司からは本当に色々なことを学ばせて頂きました。

 

さて、この温度差問題、実はなかなか根深いもので。最もないがしろにされているのが「夫婦間」だと私は思っています。ないがしろにしすぎるとあとからじわじわと大きな津波が襲ってくるかもしれません。それについては次回あらためて。

 

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